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「よく意味は分からんが、『ボクの勝ちでいいの?』と伝えれば分かると言われたぞ」
「!!」
光太は息を飲んだ。
光太が琴音に告白するのが先か、郁晴が父親を説得して留学するのが先か。
光太は郁晴に勝負を挑まれていた。
その勝負の決着を郁晴はギリギリまで待っていてくれたのだ。
なのに俺は……。
今回もまた琴音への告白を先送りしようとしている。
なんて俺はヘタレなんだ……。
光太は肩を落とし、何も言わずに旅立った郁晴のことを思った。
ーーボクの勝ちでいいの?
挑発的な郁晴の言葉を反芻する。
「…………。いや、まだ勝負はついていない!」
考え込んでいた光太は急に顔を上げると、琴音を振り返った。
「琴音、行こう!」
「行くってどこへ?」
「空港さ。まだ間に合う! 俺はそこで郁晴との勝負に決着をつける!」
光太はそう言うと、琴音の手を取った。
「え、ちょっと、どういうこと?」
勝負の内容を知らされていない琴音は困惑する。だが光太は強引に琴音の手を引き、試合会場を飛び出して行く。
その背中に、事態をなんとなく察した、澪、寧々子、翔琉、亜里沙、みんなの声援が飛んだ。
「よし、行ってきなさい!」
「頑張ってね~」
「師匠、頑張ってください!」
「お姉ちゃん、気を付けてね~」
【つづく】
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