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車は国際線ターミナルのエントランス前で停車した。
「ふう、死ぬかと思った」
「安心しろ。ウチの子供が乗っているときはやらん」
「当たり前です!」
琴音と光太は、英雄に礼を言うと車から降りた。出発ロビーに向かう。
だが出発ロビーはだだっ広く、たくさんの人々でごった返していた。
「どうしよう。これじゃ、郁晴くんを見つけられないよ」
琴音が当惑して言う。
光太は拳を握りしめた。
「くそ、郁晴と約束したっていうのに!」
「約束? ねえ、約束とか勝負ってなんなの? 一体、郁晴くんと何があったの?」
「そ、それは……」
光太は観念して正直に琴音に話すことにした。郁晴が留学を決めるのが先か、光太が琴音に告白するのが先か、二人は勝負していたのだ。
「あいつは俺の背中を押してくれようとしていたのに、いつまでも俺は先延ばしにしてきた」
光太は悔しげに唇を噛みしめる。
できれば、郁晴に見届けて欲しかった。
二人の行く末を。
それなのに……。
琴音は二人がそんな勝負をしていたことを知って驚いた。確かに郁晴くんには色々と世話になった。二人の結末を見届けて貰うなら彼しかいない。
だったら……。
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