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琴音は意を決して光太の真正面に回り込んだ。
「?」と光太が不思議そうな顔をする。
琴音は光太に告げた。
「いいわよ。ここで告白して! どこかにいる郁晴くんにちゃんと聞こえるように大声で!」
「大声ってそんな……」
光太は周囲を気にした。ここでそんなことをしたら、いい見世物になってしまうのは明らかだった。
「周りを気にしてる場合じゃないでしょ!」
「お、おう!」
光太は腹をくくった。
大きく息を吸って叫ぶ。
「琴音……俺は……!」
「……」
「……」
突然の空手着姿の高校生が大声を張り上げたので、周りの人々は何事かと振り返る。注目を集めるが、それでも構わず光太は叫んだ。
「俺はお前のことが好きだ!」
「私も光太のことが好き!」
そのとき、二人の背後でパチパチと手を叩く音がした。
振り返ると、旅行カバンを足元に置いた郁晴が拍手していた。
「良かった。ようやく告白したね」
「郁晴くん!」
「お前、黙って見てたのか?」
「ああ、だいぶ前に来たことに気づいたけど隠れて見てた。だって君たち追い詰められないと、告白しないと思ったから」
「ひどい」
「あははは」
郁晴は屈託なく笑っていた。
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