1食目:焼肉食べ放題の涙

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 亜里砂のそのひと言に、琴音の箸が止まった。  そこで初めて琴音は顔を上げる。  前髪で見えていなかった目が涙で潤んでいた。  琴音はずっと泣きながら焼肉をむさぼり喰っていたのだ。 「うわぁああああ~ん(泣)」  ついに限界に達して、琴音は顔をぐちゃぐちゃにして声を上げて泣き出した。  そんな姉を見つめ、亜里砂はため息をつくと、振り返って店員さんを呼んだ。 「なんでしょうか?」 「追加でカルビ10人前をお願いします」 「はっ?!」  女性店員は唖然とした。  号泣している琴音のことを横目でチラチラ気にしながらも、テーブルの上に重ねられた空き皿を見る。  すでにかなりの量を食べたはずだった。  さらに10人前も食べられるとは思えなかった。 「あのぉ、こちらは食べ放題メニューになっておりますが、食べ残しをすると罰金になります。少しずつ注文した方が良いかと思うのですが……」  女性店員が気を利かせて助言するが、亜里砂は首を横に振る。 「いえ、姉が全部食べるから大丈夫です。ウチの姉はこうなってからが本番なので」  亜里砂はそう言って肩をすくめた。
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