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琴音が男にフラれてやけ食いするのは毎度のことだった。
もともと食べるのは好きな方だが、フラれた直後は歯止めがきかなくなる。
「よーし、今日は無礼講! だから太るとか、カロリーとか考えないで食べまくってやるよ!」
そう宣言してやけ食いする。
そして妹の亜里砂を相手に愚痴るのが定番になっていた。
今日も亜里砂に語ったところによると、テニス部のマキノ先輩に告白して、見事にフラれたらしい。
「マキノ先輩って大会で何度も優勝して、テレビの取材もよくきている、あのイケメンのマキノ先輩?」
「そうだよ」
「あのさ。お姉ちゃんはいつも狙うところが高すぎるんじゃない? どうしてそんなに高望みするの?」
「だってやっぱり付き合うなら、誰もが羨むイケメンがいいじゃん」
琴音はいつも女子に人気のイケメンを好きになる。
マキノ先輩の前は、地区大会で準優勝した野球部のエース。さらにその前は演劇部で主演をやった人だった。
「相性とかもあるでしょ。結局、いつも顔だけで選んでいるから、うまくいかないんじゃない?」
しっかり者の亜里砂が姉の琴音に諭すように言う。
だが琴音はまるで聞いてない。
「あーあ、どっかに私のことを好きになってくれるイケメンとの出会いはないかなぁ」
そんな風にぼやきながら焼肉10人前を見事に完食した。
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