白い封筒

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「ごめん、岳。避けたんだよ……でも、唇の端に触れて…」 「あの日、俺、先に帰ったから……阻止出来なかった…」 「ごめん、ごめんね…」 「いいよ。今は俺の澪だから」 星野の唇が澪の唇に重なり、深く想いを繋げた。2人でソファーに座り、脅迫文ともとれる文章を星野が読む。 「「探るのはやめろ。やめなければこの画像を彼に送信する。別れればいいだけの話だ。簡単だろ」って。俺達を別れさせるのが目的か」 「うん…」 「こんな写真で別れる訳ないだろ。腹は立つけどな…」 「岳…?」 星野が澪の顔を見つめて言う。 「言っとくけど、ムカついてるよ、俺。嫉妬はするから。ただ澪と別れる事なんて考えられない。俺は今の澪があるのは、俺の知らない過去があったからだと思っている。だから、過去も今も全部俺がもらう。そして、これから一緒に進んでいきたいんだ」 「…っ……岳っ…」 「これは俺と付き合う前の過去だ。彼も今の澪を作る(かて)だ。ただ澪、過去をこうして俺が見てしまった責任は取ってもらう」 「責任…?」 「そう……あとで、じっくり、ベッドでな♡」 星野がニヤリと笑みを浮かべ、澪の涙で濡れた頬にキスをした。 「だけど一体誰なんだ? 澪は心当たりないのか?」 「分からない。けど、もしかしたら……この入江君の件から繋がっているかも知れない」 「ん…? 彼が何か?」 「ううん。彼じゃなくて、岳も見てたでしょ。私にカクテルをかけて怒鳴った女性」 「あぁ、見ていた。あの女性が?」 「うん。今日、料理教室が終わった後、見かけたの。鞠ちゃんが落とし物をして、渡そうと思って追いかけたら、その女性と親しそうに話していたの」 「えっ、鞠ちゃんって、料理教室で仲良くなったっていう子だろ?」 「うん。もし、あの夜の事がきっかけなら、鞠ちゃんは私を偵察していたのかも知れない…」 星野は驚きのあまり言葉を失っているようだった。澪も駒木には気を許し仲良くしていただけに、ショックを隠せなかった。偶然あの女性と仲が良かったのだと思いたくても、その偶然がただの偶然には思えなくなっていた。 すると突然、澪の携帯が鳴った。画面の表示には『桜』の文字。澪は携帯を取り、電話に出た。 「もしもし、桜。どうしたの?」 《あっ、澪、今いい?》 「うん、いいよ」 星野が「スピーカーに切り替えて」と小さく言い、澪はスピーカーに切り替え、ローテーブルに携帯を置く。 《色々と調べてみて分かったわ。白い封筒を送っている犯人》 「えっ! 誰っ?」 《最近辞めた、入江 光君。彼が犯人よ》 「えっ……光君が犯人?」 《そう。入江 光 という名前も偽名だったの。本名は(はた) 匡哉(まさや)、秦探偵事務所のご子息だった》
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