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翌朝、仕事に向かう車内。
「今日は、朝からウチダ貿易に行って会議なんだ。ようやく来月、新ルートで輸出出来るようになったから、入荷後の予定を話し合うんだ」
「やっとだね」
「あぁ、午後の3時までには帰って来る。その後は予定を入れていないから、今日は一緒に帰って『ラブ&ピース』に向かおう」
「うん、分かった」
星野はミーティング後、次期営業部長をつれウチダ貿易に向かった。澪は西原から聞いた話を古谷に話そうと、昼休憩に誘う。古谷は笑顔で頷き、2人は社員食堂に向かった。
窓際のテーブルに向かい合わせで座り、食事をしながら澪は西原から聞いた話をそのまま話した。
「えっ、あの男性が犯人?」
「まだはっきりそうと決まった訳じゃないけど、桜はそうだって言ってるの」
「じゃ何、2通目のヤツは自分で自分の写真を使ったって事?」
「うん、おそらく…」
「うわぁ……てか、それを誰かに撮らせてたって事だよなぁ……」
「うーん。一体いつから私、監視されていたんだろ?」
「俺が追跡してたのも、気づいていたのかな? 俺は向こうの事、気づかなかったけど…」
「どうだろ? 今日、直接本人に話を訊くみたいで、オフィスに呼ばれているの」
「本人に話を訊くって、大丈夫なの? 危険じゃない?」
「大丈夫。彼も一緒に行く事になってるから…」
「あ、そうなの? そっか……あ、でも、それなら余計に危険じゃない?」
「ん…? どうして?」
「たぶん、キレるんじゃない? 彼氏。言っとくけど、俺より怖いよ」
「えっ……」
「2通目の写真を見ても冷静に話したみたいだけど、たぶん相当、キレてると思うけど……だってあの独占欲の強い彼氏だよ。ただじゃ済まないと思うけど…」
「そ、そんな事は……ないよぉ……だって桜が冷静にって念を押していたから」
「今は冷静かも知れないけど、本人を目の前にするとどうかな?」
澪よりも星野の事を知っている古谷にそう言われて、不安になり言葉を失う。以前、古谷が元ターゲットの男に会って、男の言動にキレた事があった。男の上に馬乗りになり、顔が腫れるまで殴り続け地面に拳を叩きつけ脅したくらいだ。それよりも怖い事が起こるかも知れないと想像すると、星野をつれて行くのはやめた方がいいのではないかと澪は思い始めた。
「つれて行かない方がいいかな…」
「いや、もう言っても聞かないよ」
「どうしよう…」
「俺より怖いけど、俺よりも冷静なのも確かだから、西原さんに止められているなら、大丈夫かもな…」
「そうだったらいいけど…」
仕事を終え星野と車の中、澪は昼休憩に古谷と話をして不安を抱えたまま『ラブ&ピース』に向かっていた。
「岳、本当に冷静にお願いね」
「あぁ、分かってるよ」
そう返事をした星野の顔は真剣で、澪はやはり少し怖いと感じていた。
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