白い封筒

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夜、帰って来た星野はいつも変わらない様子。会食の様子を話せる部分だけ話し、ベッドで澪を抱く。何も怪しい所などない。 (あれは、誰かの嫌がらせ? 岳は何も変わってない…不安になる事はないのかも…) 星野の様子を見てそう思った澪は、一体誰があの封筒を何の目的で入れたのか気になり始めた。宛名がないという事は、直接ポストに入れに来ている。住所が分かっていて、しかもあれは澪に宛てたもの。 翌日の朝、ゴミ箱からクシャと丸めた紙と封筒を取り、伸ばして紙をたたみ封筒に入れる。その封筒を鞄に入れて、澪は仕事に向かった。 終業時間のチャイムが鳴ると、澪は古谷に言った。 「古谷さん、今日は私、ちょっと桜の所に行くから、先に帰っててもらえますか?」 「えっ、そうなの? じゃ、送って行ってあげるよ。場所知っているし」 「あ、でも…」 「どうせ帰り道だし、乗って行きな」 「うん、ありがとう」 古谷に『ラブ&ピース』のビル前で車を停めてもらい、澪は古谷に礼を言って車を降りる。見送った後、鉄階段を上りオフィスに向かった。 「桜、いる?」 「ん? 澪? どうしたの?」 西原が出入り口へ顔を覗かせ、出迎える。澪はオフィスの中に入って行き、西原の元に行く。オフィスには西原の他に誰もいない。鞄からクシャクシャの封筒を取り出し、西原に差し出した。 「えっ、何?」 「ちょっと桜に見て欲しいの」 澪がそう言うと、西原は封筒を受け取り、中を覗いて紙を取り出す。三つ折りになったクシャクシャの紙を開き、西原が見て驚いた顔を見せる。 「何、これ! どうしたの? これ…」 「ウチのポストに入れてあった。宛名はなくて、直接入れに来てる」 「誰が?」 「分からない。でも岳の様子はいつもと変わらなくて、岳がそんな事をするようには思えない…」 「だよね。星野さんは、澪を本当に愛しているもの。こんな事する訳ないよ」 「うん……でも、だったら誰がこんなの作って、ポストに入れたのかな? って思って」 「そうだよね。ウチも探偵や別れさせ屋をしているから分かるけど、これ、加工してるよね。印刷しているからハッキリとは分からないけど、画像を撮って修正加工してる。画像を撮ってるって事は、監視されているんじゃない?」 「いつからだろ……岳は今、すごく忙しくて、平日は昼も夜もほとんど一緒にいないの。だから監視されている事に気づかなかった…」 「そっか。そこを狙ってやっているんだろうな。これは澪宛だもんね。誰かが澪と星野さんの仲を裂こうとしてるのかも…」 「誰が…」 「本人がやっているのか、ウチみたいな会社に依頼しているのか分からないけど、画像を修正出来るのはパソコンに詳しいか、そんな環境にあるって事だよね」 (パソコンに詳しい……修正出来る環境…) 「岳はたぶん監視の追跡に気づいていない。気づかせないプロの人? やっぱり依頼かな…」 「うーん。澪、あなたに近づいて来る人がいたら、気をつけた方がいいよ」 「うん、分かった…」
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