白い封筒

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「この事、星野さんに話しておく?」 「うーん。話しておいた方がいいとは思うけど、ただでさえ岳は今忙しくて、こんな事で変に気を使わせたくないな…」 「まぁ、そうだよね。自分がまたターゲットになってるって知ったら、いい気はしないよね」 「うん。だから、ごめん、桜に相談しに来たの」 「仕方ないなぁ。親友を悲しませるヤツは、私が許さない。任せて、調べてみるよ」 「桜、ありがとう」 「ふふっ、いいよ。澪にはずっと助けてもらっていたからね。少しでも返さないと」 西原は『ラブ&ピース』の依頼を社員に任せ、星野を監視している人物を捜し始める。同業者だから相手の行動は割と読める。相手にバレないよう最善の注意をはらい、西原は調査する。 澪は今までと変わらない行動をするよう西原に言われ、毎日普段通りに過ごす。星野の予定はすぐに西原に伝え、場所や時間など行動を先読み出来るようにした。 西原が調査し始めて1週間が過ぎたある日。 「澪ちゃん、最近、何かあった?」 仕事帰りの車の中、古谷が運転しながら澪に尋ねた。澪は少し驚いて、助手席から古谷の横顔を見つめる。古谷は真っ直ぐ前を見ながら、運転を続けて話す。 「ここ最近、なんか表情が暗いよね。どうした? 岳と何かあった?」 『ラブ&ピース』でバイトをしていた時は、平静を装う事など日常茶飯事で平気だったのに、バイトを辞めた澪には周りに嘘や取り(つくろ)う事も必要なくなり、平静を装う事が難しくなっていた。しかも、悩みのタネは星野の事だ。冷静でいられる方がどうかしている。それでも澪は必死に平静を装っていたというのに、古谷に気づかれてしまった。 「どうして? どうして湊君には分かっちゃうの?」 うつむき少し涙声で言った澪に、古谷は優しく言う。 「どうしてって……ずっと、見てきたからね」 「湊君…」 (あぁ……湊君には隠せない。絶対に分かっちゃう。もしかしたら、岳にも気づかれてしまっているのかな?) 「岳と喧嘩でもした?」 澪はうつむいたまま首を横に振る。 「じゃ、最近、岳が忙しいからすれ違っていて、寂しいとか?」 「うーん、それはあるかな…」 「ふっ、喧嘩じゃなく、寂しくて落ち込んでる? それなら岳に「寂しい」って言った方がいいよ。岳は受け止めてくれるから」 「うん…」 澪は小さく返事をして、うつむいたまま黙っていた。すると古谷が続けて話す。 「何か他に気になる事があるね。澪ちゃん、俺には隠せないよ」 「湊君……あのね…」 澪は古谷には隠し事は出来ないと思い、白い封筒で届いた紙の事を話した。西原に相談しに行き、今調査中だという事も。『ラブ&ピース』の依頼の事は、第三者に話せないのだけど、依頼人である澪からならば問題はない。 「また岳は誰かに監視されているのかよ。でも今回のは悪質だな」 「うん。湊君、画像の修正って簡単に出来るもの?」 「まぁ、画像修正出来るソフトやアプリを使えば、簡単に出来るよ。俺でもね」 「そうなんだ…」
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