白い封筒

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「岳には?」 澪は首を激しく横に振る。 「ただでさえ忙しいのに、こんな事で心配をかけたくない」 「そうだけど、岳は知りたいと思うよ」 澪は口をつぐみ困ったように黙った。 「……だから、西原さんに相談したのか。分かった…俺も協力するよ」 「えっ…」 澪は顔を上げ古谷の顔を見ると、古谷の横顔は優しく微笑んでいた。 「俺の大切ないとこ達を苦しめるヤツは許せない。姫と王子を守るのはナイトの役目だから」 「でも湊君、無理しないで」 澪は古谷の気持ちは嬉しいが、心配だった。古谷は星野や澪を大切にしている分、守る為なら少々無理をしてでも守ろうとする。その証拠に、このあいだの右手の甲の傷は、痛々しく痕が残っている。 「無理はしない。約束する。それならいい?」 「うん。絶対だよ」 「うん…」 そうして古谷が犯人(さが)しに協力してくれるようになった。 だけど1ヶ月が経っても、犯人の手がかりは掴めない。西原も苦戦していた矢先、2通目の白い封筒がまた届いた。今回も宛名はなし。封筒を開け中の紙を取り出し開いて見る。澪は愕然とした。 紙に印刷された写真は連射の写真で、コマ送りのように順に並べられて動きが分かるようになっている。男性が女性を抱き締めキスをしていく様子と、女性を引き寄せ額にキスをしている様子の写真。 (これは……) そして2枚目の紙には、手書きではない文字でこう書かれていた。 『探るのはやめろ。やめなければこの画像を彼に送信する。別れればいいだけの話だ。簡単だろ』 2通目の白い封筒に入っていたのは、以前『ラブ&ピース』の同僚だった入江と澪の写真の印刷だった。入江につきまとう元ターゲットの女性を説得した日、タクシーを呼んで待っていた時に起きた出来事が、今、澪の目の前に印刷されて送られて来たのだ。 「噓でしょ……一体、いつから…? 監視されているのは私も?」 それは犯人からの警告とメッセージだった。澪は怖くなり、手から紙を落とす。澪の事を監視していたのは、古谷の他にもいたという事になる。だが、いつから監視されていたのか、全く澪には分からなかった。 すぐさま西原に電話をかけ、2通目の事を話し監視をやめるよう伝える。だが西原は素直に頷く事はなく、相当やり手の相手に余計に意気込む。 西原自身も相手の尻尾が掴めず、このまま引き下がる事も出来ないと言い調査は続けると言った。 「でもっ…」 《澪、星野さんに光君の事は話したんでしょ。友人だって》 「うん…」 《それなら、もう星野さんに話した方がいいよ。犯人から伝わるより、澪の口から話した方がいいよ》 西原にそう言われて、澪は悩みに悩んだ挙句、澪から星野へ話す事にした。でも星野がこの写真を見て何と言うのか、澪は頭を抱えて必死に星野への説明を考えていた。
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