18歳  《四月》

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 窓を開けると、首元に朝の冷たい空気が流れ込んできた。「朝は窓を開けなさい」という、母親の教え。  独り暮らし十日目にして初めて実践して、少し後悔する。  北の四月は、まだまだ寒い。    まだ慣れない新生活は、憂鬱が積み重なるにつれ、朝起きるのが億劫になってゆく。  それでも毎日、朝はやってきた。    想いが先走り、四年間の学びをこの北の街に決めて移り住んだ。  迷うな。貫け。  決心してから、自分にそう言い聞かせて邁進した。  僕はこの四月、始まりに立っていた。    今日も身支度をして窓を閉めようとしたとき、外が桜色に色づいていたことに気付いた。 「あ、桜……」    下ばかり向いて気付かなかった。  この街には、これから桜の季節がやってくる。  東京の実家から遠く離れて、置き去りにしていた季節が追いついてくる。  僕はようやく上を向いて、言い放った。   「母さん、行ってきます」
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