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窓を開けると、首元に朝の冷たい空気が流れ込んできた。「朝は窓を開けなさい」という、母親の教え。
独り暮らし十日目にして初めて実践して、少し後悔する。
北の四月は、まだまだ寒い。
まだ慣れない新生活は、憂鬱が積み重なるにつれ、朝起きるのが億劫になってゆく。
それでも毎日、朝はやってきた。
想いが先走り、四年間の学びをこの北の街に決めて移り住んだ。
迷うな。貫け。
決心してから、自分にそう言い聞かせて邁進した。
僕はこの四月、始まりに立っていた。
今日も身支度をして窓を閉めようとしたとき、外が桜色に色づいていたことに気付いた。
「あ、桜……」
下ばかり向いて気付かなかった。
この街には、これから桜の季節がやってくる。
東京の実家から遠く離れて、置き去りにしていた季節が追いついてくる。
僕はようやく上を向いて、言い放った。
「母さん、行ってきます」
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