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「もしもし」
「あ、もしもし。何してた? 寝てない?」
「寝てないよ。もちろん勉強。そっちは?」
「私も。そうだよね、だから気付かなかったんだよね」
「何の話?」
「窓。外、見れる?」
「外?」
「うん、外」
「……あ、雪」
「言った」
「え?」
「言っちゃうよね、いくつになっても、初雪が降ってきた日は「あ、雪」って」
「そうかも」
「私は地元だけどさ、雪国に20年以上住んでても毎回言ってる」
「そうなんだ」
「あーあ。また雪に悩まされる季節になるね」
「僕はこの街の冬は3回目だけど、こんなに雪が大変なんて知らなかった」
「でもさ、こうして部屋の窓から見る初雪は、綺麗じゃない?」
「うん。綺麗だ」
「どう? 少しは気分転換になった?」
「うん。ありがとう。少し煮詰まってたから」
「よかった。いつも頑張り過ぎだよ? 机に向かってばっかりじゃダメなんだからね」
「うん。理解のある恋人で、僕は幸せだ」
「へへへー。あのさ、たまにはこうして電話しようよ。少し話そう。窓を開けてさ、外の空気を吸いながら」
「……」
「どうしたの?」
「何でも」
「うん?」
「いや、寒いからさ。実家でも降るかなって」
「東京はまだじゃない? ここから距離があるし。遠いよ」
「遠いね」
「じゃ、もう少し頑張る?」
「うん。来週までは頑張ろう。お互い」
「うん。無理しないでね。おやすみ」
「おやすみ」
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