ニャン

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ニャン

結婚して暫くの間、柴又の小さなアパートで生活していた。 江戸川の近くで、河原には野良猫が沢山いた。 その中に、子猫より少し大きめなキジ猫が、大きな猫達の集団の後を、毎日必死に付いて歩く光景を目にしていた。 ある日、その猫がアパートの前で、大きな声で鳴いていた。 いつもの仲間とははぐれてしまったのか、そばを通った私に付いて来た。 私は猫も苦手だが、アパートの前まで付いて来る猫を、追い払うのも可哀想と思い、何か餌になる物をあげようと冷蔵庫を探った。 先日、お義父さんから頂いた霞ヶ浦のワカサギの塩漬けがあった。 今は、猫の好物の魚とはいえ、塩漬けはあげてはいけない物だと分かるが、その頃は、魚なら何でもいいと考えてしまい、与えてしまった。 その子は、ムニャムニャ喜んで食べていた。 そして、毎日玄関の前で待つようになり、いつの間にか、部屋の真ん中で仰向けになって寝る我が家の大事な一員となった。名前も“ニャン"と命名した。 しかし、アパートの大家さんに、猫はダメ。 犬なら玄関の外で飼えばいいと言われたが、ニャンと一緒にいたいと思うようになっていた。 仕方なく、アパートを引っ越しして、千葉の郊外にマンションを買った。 友達は猫のために、マンション買ったのかと、皆驚いていた。 一緒に生活したら、もう家族だから、家族捨てる人いないでしょ!
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