やっと会えたね

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「危ないっ」 そう叫んだ時、私は道路に飛び出していた。 鈴川真衣(すずかわまい)。どこにでもいる平凡な中学生。だけど、ちょっぴり…いやかなりの猫好き。 趣味は猫の動画を見ること。そして、猫グッズを雑貨屋さんで見つけると買わずにはいられない。 ただ、何の神様の悪戯か分からないけれど、両親がどちらも猫アレルギーで、家で飼うことができないのだ。だから猫を飼っている友達が羨ましくて仕方がない。 習い事のピアノの帰り、信号が青になるのを待っていた時だった。 横断歩道の向こう側から、猫がきょろきょろしながら道路に出てきた。 私はハラハラして見つめていたが、幸い交通量の少ない時間帯だったので、何とかこちら側まで渡って来れそう…と考えていた時、遠くから赤い車が走ってくるのが見えた。 猫はまだ横断歩道の中間地点。 このままだと猫がはねられてしまう…! そのことに気づいた時、私は既に走り出していた。 冷静に考えれば、もう少し賢い方法があったのかもしれない。でも、単純に、目の前の猫に危険が迫っている中、じっとしていることなんてできなかったのだ。 ドンッ 私の身体は宙に浮いた。 ──今、私は冷たい道路に横たわっている。 遠くから救急車のサイレンが聴こえる。 腕の中には白と黒の小さな猫。 猫はまんまるの瞳で私を見つめている。 「よかった…無事なんだね」 ホッとすると何だか意識が遠のいてきて──私は静かに目を閉じた。
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