『その魔法はいつだって世界を変える』の扉

3/4
前へ
/56ページ
次へ
「あれかな、例の都市伝説……今日9月18日だし。だったらこの先って異世界に通じてるんでしょ? 私達も何かの物語になっているのかもよ。『その魔法はいつだって世界を変える』って、やけに長いけどこれがタイトルかな?」 「トーマスが騒いでいた与太話(よたばなし)ですか? だとしたらハル辺りが都市伝説をなぞらえて置いていったのでしょう。そんなに暇なら幾らでもやって欲しい仕事は有るというのに……」 ルカの言葉を聞き流しながら、レイは扉をまじまじと見た。 深いブラウンの木製扉にはきれいなモザイクガラスがはめこまれていて、中は見えなかった。 けれどアンティーク風の引手には、不思議と開けてみたくなる魅力がある。 何故かとてもわくわくして、手を掛けずにはいられない。 「えい!」 そもそも好奇心が強く、ある意味無鉄砲な彼女は迷わず扉を開いた。 この無鉄砲さは自らの能力である障壁(シールド)の強さによるものだろう。 何があっても破られない自信が躊躇いを無くす。 「こら! もう少し慎重に……」 (とが)めようと声を上げたルカは扉の向こうを見て、レイの肩に手を掛ける。 ちらりと後方を確認して空間を跳躍した。 彼の能力である空間跳躍は300メートル以内、目視可能であればどこにでも転移可能だ。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加