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「おい答えろ!この湖では金や人間が落ちてくることがあるんだろ?俺はそれを狙ってわざわざやって来たんだ。金があれば遊んで暮らせるし、女がいれば性欲を満たせる。お前みたいな役立たずはいらん。早く金か女をよこせ!!」
再び怒りをぶつけると、着物を着た女の子の日本人形が負けずに言い返した。
「オジさん、あなたのやってきたことは全部悪いことです。犯罪なんです。人のお金を盗むことも、嫌がる女性の体を触ることもね。そんなこともわからないの?学校行ってないとか?とにかくオジさん、捕まって更正するべきだよ。残りの人生、しっかり反省して生きてよ。ウチと一緒に警察署へ行こう。ウチが連れてってあげる!」
人形は笑いながらそう言うと、突然空中を舞って向陽に近づき、彼の腕に噛みついた。
「いでででで!!貴様、何てことを……」
猛烈な痛みに耐えきれず、向陽は腕を押さえてその場に倒れてしまった。
「オジさん。今までずっと逃げてきたんだね。罪からも自分の弱さからも。でも大丈夫、罪を認めた方が楽になれるよ。オジさんは一人じゃない。警察に全てを話して、オジさんが社会復帰できるように今後の人生プランを立ててもらおう。ね?」
なぜか向陽の過去の悪事を知っており、ひたすら警察に自首を促そうとする日本人形。その意外な対応をする人形を、不思議そうに見つめる向陽だったが、痛みに耐えながらもゆっくりと口を開いた。
「お、お前、なんで俺の犯罪のこと……。そうだ、俺も苦しかったんだ。本当は悪いってわかってたのに、痴漢も強盗もついつい出来心で…。情けない。わかった、警察へ自首するよ。今までの被害者たちに申し訳ないから、ちゃんと償って更正して出てくる。その後しっかり働けるようにな」
「うん、そうだよ。よかった、ウチの想いが通じて。じゃあウチの髪の毛に触れて。オジさんを警察署まで、ひとっ飛びで送り届けてあげるから」
「でもそれってセクハラじゃ……」
「いいから早く!」
「お、おう」
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