Ticket

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 目を覚ますとそこは学校の保険室だった。ベッドの上で寝がえりを打ったのか、風にそよぐカーテンが私の頬をなでていた。  慌てて周囲を見渡すけど、そこには誰もいなくて生温かい風だけがいた。 ──ゆ、め?  私は夢の世界にトリップしていたらしい。今夜放映の『めしめし』が早く観たいって思ってたから?  これを完璧なトリップ状態だったって言っていいの?  転生じゃ?? ──ラグドリーまじカッコ良かったのにな〜。  体が熱くなったおかげで、貧血から脱せたようだ。こんなに悶々とした私をみすみす保健室に送り戻すなんて、ラグドリーもバカだね。  ガマフィンが出てきて三角関係のもつれ!  ってのもありだったのに。ガマフィンは臆病風にふかれたかな。  それにしてもリアルすぎた。  やっぱり私はあの世界にいたはずだ。  とすると……。  私のひどい貧血がチケット発行のタイミングだとしたら、また行けそうだよね。  でも、それならどこからスタートになる?  ラグドリーとの絡みは終えてないよね。転生先で大人の階段登り終えてましたなんて冗談、いやよ。  なにしろ過程が大事なんだから、過程が!  申し訳ないけど、状態から始めるのはなしだよ。私の気持ちの整理だってあるんだから。というか、ちゃんと姫スタートでいんだよね。  なんだか心配になってきた……でもまぁ。  時はソマリ暦一〇六年。  舞台はフォールディン王国。 「我は、フォールディン王国の姫、スコル・ティッシュ・フォールディン姫なるぞ」  発生練習だけはしっかりとしておこう!
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