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待ち合わせ場所は、小さな神社だった。
開発から取り残されたような寂れた神社。境内で錆びたブランコが揺れていた。
あの朝、プリンを残して孝太が消えてから、俺たちは連絡を取っていなかった。俺から連絡する権利などないと思ったし、孝太が何も言ってこないのはやっぱり俺を許せないからではないかと、半ばあきらめようとしていた。
孝太からメッセージが入ったのは、昨夜のことだ。
『おまえんちのそばに、穴場のラーメン屋があるんだって。テレビでやってたんだけど、行ってみねえ?』
テレビで放送している時点で穴場といえるのか、とは思ったが、孝太に会いたかった。孝太からの誘いを断ることはできない。
メッセージは、あの夜のことには何もふれていない。ラーメン屋は口実で、きちんと顔を合わせて怒るなり、俺の気持ちを断るなりしようとしているのかもしれない。孝太は俺みたいに逃げまわるだけの卑怯な人間じゃないはずだ。
キィキィと風に軋むブランコを眺めながら、孝太を待つ。
「涼介、お待たせ。行こうぜ」
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