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孝太はふらりと現れて、どうということはないふうに俺に声をかけた。
もしかして、何もなかったことにされるのだろうか。今までどおり、幼馴染みとして、友達として過ごしていきたいということなのか。
戸惑う俺にかまわず、孝太は大学であったことや新しく始めたバイトの話をしている。
「あ、ここ、ここ。げっ、並んでるじゃん」
住宅やアパートに囲まれた、古びたラーメン屋の前には行列ができていた。
「テレビでやったからだろ」
「俺たちと同じかー」
ケラケラと笑う孝太。
孝太の気持ちがわからない。
「でも、せっかくだから、並ぼうぜ」
二十分ほど待ってありついたラーメンは、あっさりした醤油味で正直物足りない。孝太もそうだったようで、「アーケードの商店街に、ジェラートの店あったよな? そこ行こ」と上目遣いで俺を誘った。
「……んっ、はぁっ」
「孝太」
マンションの部屋の扉を開けて、閉じて。
鍵をかけた瞬間に、抱きあっていた。どちらからともなく腕を伸ばし、貪るようにキスをする。
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