俺の××を返せ

4/19
54人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
 孝太はふらりと現れて、どうということはないふうに俺に声をかけた。  もしかして、何もなかったことにされるのだろうか。今までどおり、幼馴染みとして、友達として過ごしていきたいということなのか。  戸惑う俺にかまわず、孝太は大学であったことや新しく始めたバイトの話をしている。 「あ、ここ、ここ。げっ、並んでるじゃん」  住宅やアパートに囲まれた、古びたラーメン屋の前には行列ができていた。 「テレビでやったからだろ」 「俺たちと同じかー」  ケラケラと笑う孝太。  孝太の気持ちがわからない。 「でも、せっかくだから、並ぼうぜ」  二十分ほど待ってありついたラーメンは、あっさりした醤油味で正直物足りない。孝太もそうだったようで、「アーケードの商店街に、ジェラートの店あったよな? そこ行こ」と上目遣いで俺を誘った。 「……んっ、はぁっ」 「孝太」  マンションの部屋の扉を開けて、閉じて。  鍵をかけた瞬間に、抱きあっていた。どちらからともなく腕を伸ばし、貪るようにキスをする。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!