黒涙

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 外に出ると、もう日は沈んでいた。夜道を二人、並んで歩く。  並ぶとかれんは背が高くすらっとしていて、りなは背の低い自分が嫌いになる。 「りなちゃん。食べたいもの、ある?」 「ない……」 「そっか。じゃあ、麻婆茄子にしましょう。私が食べたいの」 「いいね。茄子と挽肉買えばいいかな? ネギは家にある。豆板醤はあったけど、甜麺醤あったっけ……」 「なくてもお味噌で代用できるわよ。じゃ、茄子と挽肉ね」  会話をしているうちに、スーパーに着いた。暗い中、白色の照明が煌々と光っている。  カゴを取り、入口すぐの野菜コーナーで茄子を探す。 「あった」  紫がてかりと光っている。四本入りだ。カゴに入れる。 「次は挽肉ね」 「だね。豚挽肉かな」 「そうね」  ここは肉が安くておいしいスーパーだ。ちょうどいいのがあるはずだと、りなはかれんに言う。感心するかれん。  肉のコーナーに辿り着いた。使う分量ちょうどのサイズと、分量の二倍の、だが安いパックがあった。 「どうしよう」 「このぴったりのじゃだめなの?」 「それもいいんだけど、また買いに来るの面倒だし、大きい方にしようかな。余りは冷凍しよう」 「いいわね。さすがりなちゃん」 「え、そんなことないって」  大きいパックをカゴに入れる。 「お姉ちゃん、これでおしまい……って、どこ!?」  かれんが消えていた。りなは早歩きで店内を探す。  かれんは、肉のコーナーから少し離れたプリンのコーナーにいた。 「み、見つけた……」 「あら、りなちゃん。ごめんなさいね。プリンがどうしても食べたくって」  かれんの手にはビッグサイズのプリンが握られていた。カゴに入れるかれん。 「りなちゃんはデザート食べないの?」 「私は……いいかな。こんな私が食べていいのか……」 「食べていいのよ! せっかくだから選びましょうよ」  かれんは「これとかどう?」とりなに見せる。 「んー」 「プリンが嫌ならゼリーもいいわね」 「ゼリー!?」  りなはゼリーが大好きだった。透き通るぷるぷる、中に入った果肉。その全てが、りなは好きだった。 「ゼリーどこ?」 「こっちよ」  このスーパーは新しくできたから、りなもまだ全部の食材の場所を知らなかった。ゼリーがあることも知らなかった。かれんと一緒に来れたから、ゼリーを手に入れられそうだ。  着いた先には、見慣れたゼリーが並んでいた。 「わぁ……!」  りなは嬉しくて感嘆の声を漏らす。その中から、縦長のカップのゼリーを一つ、手に取る。果肉がしっかりとそこには沈んでいた。りなはゼリーをカゴに入れる。 「それにしたのね」 「うん。これ好きなの」 「あら、それは初めて知ったわ。そうなのね」  かれんはふわりと微笑んだ。りなも嬉しくて笑う。  レジに並ぶ。りなはマイバッグと財布を用意する。 「あ、ごめんなさい。マイバッグとか持ってないのよね」 「いいよ。少ないから一個で足りるよ」  りなは謝るかれんを気にしてそんなことを話した。
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