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「どうしたの、???。買い物行くんでしょ?」
気付いたら母親が目の前に居た、だけど周りはパトカーと警官が何人か店の前に止まっていた。一体何が起きたのか、不思議なことに全く思い出せない。
「危ないわねぇ、ここで事件があったんでしょう?」
「え、あ、うん……」
少し早く来ていたら、私達はきっと事件に捲き込まれていたのだろう。だけどもしも別の世界線の自分がこの場所この時間に居合わせて偶々亡くなったから私自分はここにいる。
よく分からないのに、そんな気がしたんだ。
───もしも、私だけど違う平行世界の私が生きて居たとしたらこの未来は閉ざされていたのかな?
そう考えると、震えが止まらなかった。あの時見えた天の歪みはもしかして、別の世界の「私」が亡くなった事を報せる何かなのかも知れない。
が、得体の知れぬ恐怖ばかりに気を取られていては一向に前に進めない、だからこのときはあまり深く考えなかったんだ。
「…で…よ。…え……て」
しかし、遠くから微かに聴こえてくるその声も気のせいだと思うのには流石に無理があった。
「……ありがとう」
雫が頬を伝う、気づけば涙を流す自分がいるのだ。それなのにまだ気づけずにいる、いや本当は最初から察しがついてはいたんだ。
「ようこそ、202?年へ」
聴こえた鮮明な声が、その真偽を確信へと変えた。
(ここは、私が居た世界じゃない……)
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