始まりの日も唐突に。

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夢のような出来事から数日。すっかり日常は日常になりつつあり、五月病が校内に蔓延している。 そんな中、今日も今日とて、僕、須藤 郁人は毎朝のルーティンであるろく先輩を眺めるために、校門前にスタンバイしていた。 しかし、ここ数日奇妙な現象に悩まされている。 「はよ、フミくん。」 「お、おはよう、ございます…。」 僕にフミくんと声を掛けるその人を戦々恐々としながら振り返る。 「ろ、ろく、先輩…。」 まさに目の前にいる人物、ろく先輩が奇妙な現象の理由である。 「な、なぜ今日もろく先輩が…。」 「俺が、なに?」 「いえ、なんでもありません…。」 それが始まったのはあの日の翌日のこと。朝、いつものようにソワソワしながら校門でろく先輩を待っていると、突如後ろから肩を叩かれたのだ。 最初は気まぐれかとも思ったが、もう連続5日目ともなればただの気まぐれとは言い難い。 つまり、ろく先輩と僕の立場が逆転してしまっているわけだ。 「今日も怠いなぁ。」 「…そ、そうですね。」 けれどろく先輩は、そんなこときっと微塵も気にしていなさそうに今日も決まって気怠い会話を続ける。 しかし、どうしてこうなった。僕の隣で甘い匂いを漂わせながらゆっくりと歩くろく先輩をちらりと盗み見し、やはりわからないとここのところ毎朝のように痛める頭を抱えたくなる。 あの日、確かに僕はろく先輩に失礼なことを言ったはずだった。なのに、何故か逆に目をつけられる羽目になっている。 いや、憧れのろく先輩と貴重な朝の登校時間をともにできるのだ。この上ない光栄である。 だが、出来ることなら朝じゃない方が良かった。何故ならー。 「ろく!おっはよ〜!」 「隣の後輩くんもおはよ〜!」 「お、おはよう、ございます…。」 後ろから突如、甲高い声を掛けられた。 生徒玄関まであと僅か。歩数にすれば10歩くらいだったのに! ふわっとフローラルな香りが鼻をくすぐり、ろく先輩の甘い匂いがかき消される。 これが、朝じゃない方が良かったのにと嘆く原因である。
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