25人が本棚に入れています
本棚に追加
始まりの日も唐突に。
迎えたゴールデンウィーク明け。夢現な気分のまま、僕は校門の前に立っていた。
約一週間ぶりに会える、といっても店で会えたから他の人よりは会えているのか。
店、と思い出すのはやはりあの日のことだ。
あの日、偶然にも会った店のトイレ。
まるで夢のようなけれど現実に僕はあの日から夢現な毎日を過ごしている。
しかし、今日は遅い。ろく先輩はいつも校門締切時間20分前にここを通る、なのに今は既に20分前を過ぎ後10分で締め切られてしまう時間だ。
もしや、休みなのだろうか。そんな疑問と不安を頭に過らせていた時だ。
「あのー…君。」
「…あの、ねえ、君。」
なんだ、しつこい。背後から掛けられる声にそう思いながらも、瞬間ドキリとした。
「ねえ、君だよ。ちょっと、いい?」
肩をトントンと叩かれ、恐る恐る振り返る。
「え、ぼ、僕?」
「そう、君。ちょっといい?話があるんだけど。」
ろく先輩、と心の中で呟きながら、まさかの展開に上から下までまさに全身硬直状態。
また夢かと疑った。そういえば今日はろく先輩、朝遅かったからもしかして夢なのかも。
けれどその儚い妄想はすぐに打ち消される。
「あの、君?俺の話、聞いてる?」
だってろく先輩が、僕の顔を見つめているのだ、しかも結構な至近距離で。
ああ、もうダメだ。ろく先輩が近すぎる。
キメの細かい肌にはまるで毛穴なんて一つもないのだろうか。
とにかくいっぱいいっぱい過ぎて、しかし肩に置かれた手の暖かさかが現実味を帯びさせてくれて僕は一歩後ずさってろく先輩を見上げた。
「あ、あの、なんでしょうか?」
「ああ〜んと、まあ話があるんだけど。ここじゃあれだから今日学校終わったらココ、集合してくれる?」
「は、話?話ってなんですか?」
「まあそれは、あとで。な?」
ポンと置かれた、頭に手を。
最初のコメントを投稿しよう!