4.【買い出し】その3

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4.【買い出し】その3

その日からショップを訪れることが日課となり、彼女のことばかり考えて過ごす日々が続いた。想いとは裏腹に、何の進展もないまま3ヶ月が過ぎようとしていたある日、突然転機は訪れる。 その日は夕方の会議が長引き少し遅い帰宅となったが、閉店時間まではまだ余裕があったので、車を走らせショップへと急いだ。 普段は賑わっている店内だが、その日の客足はまばらで、すれ違う人々は閉店が近づいている事を告げるよう早足で通り過ぎて行く。早速、彼女の姿を探すが見つける事は出来なかった。平日の夕方は勤務時間であることを知っていたので、『休みなのかもしれない』そう思いながらレジに向かった。 「いつも、有難う御座います」 女性の声が聞こえて来たのは、広い通路を歩いている時だった。反射的に立ち止まったが、果たして俺に向けられた言葉なのだろうか、自信はなかった。半信半疑で声の聞こえたほうを見ると、見慣れた紺色のエプロンが視界に飛び込んできた。トマト柄を(あし)らったエプロンの女性は軽く会釈をする。 俺は自分の目を疑った。彼女だ、そこには彼女が立っていた。しかも視線は俺に向けている。 まさか、そんなはずはない。自分の目を、耳を疑い、辺りを見回し、ようやく確信する。間違いなく、彼女は俺に挨拶したのだ。 屈託ない笑顔で見つめられ、意表を突かれた事もあり、驚きが表情に現れていたのだろう。 「あっ、そ、その、、、最近、よくお見かけするもので、、、す、すみません」 彼女は笑顔を曇らせ、落ち着かない様子で俯いてしまった。 脳が彼女の言葉を理解する頃、多少の冷静さは取り戻せた。慌てて表情を作り、取り繕う言葉を必死に考えた。その時だ、脳裏に何者かの声が響いたのは。 『さあ、どうする?お手並拝見と行こうじゃないか。クックックッ』 低音のその声は、嘲笑いを響かせた。
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