しょうもない超能力(スーパーパワー)

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しょうもない超能力(スーパーパワー)

 俺はしょうもない超能力をもつ。  物を浮かすパワーはたった5センチだけである。    人の心の声はたまに聞こえるがものすごくちっさい。 『ー…っー…ぁー』  はあっ?!  ゴショゴショ小さい声で聞こえねえよ。  聞きたくもない雑音の嵐。  透視?  いや〜そこ気になるよね。  出来ますよ透視も。  じーっ……はいっ! 見えました。  みんなガイコツです。  それから  調整すると……なんと!  はい。人体模型みたいですよ皆さん。  内臓が丸見えです。  あ〜怖。  しょうもないでしょ〜?  いらない超能力です。  俺は知念レオって言います。  家族は五人家族です。  父ちゃん母ちゃん姉ちゃん兄ちゃんと俺。  知念家は家族全員が大したことないしょうもない超能力をもってます。  日常生活で役に立ったことがないです。  いらねえな。  ところがある日。  父ちゃんが急に騒ぎ出した。  母ちゃんも姉ちゃんも兄ちゃんまでもが騒ぎ出した。 「地球が滅ぶ―――!!」  はあっ?!  何言ってんだ? 「もうあとがないぞ」 「でっかい隕石が今来る!」 「やだなあ。知らなきゃ良かったよ。  なんでみんないつもへっぽこ超能力者のくせに予知能力だけは覚醒したのか?」  父ちゃん母ちゃん兄ちゃん姉ちゃんは家の屋根に登って俺を呼んだ。 「家族みんなの念力で巨大隕石をどうにかしよう!」 「もしかしたら破壊できるかしら」 「宇宙に飛ばし返すとか?」 「お前も念じろ」 「俺たちはしょぼい超能力者一家だから無理だよ」  俺は仕方がないから家族と同じように屋根の上で両手を(かか)げた。  ゴゴゴゴゴォォォ……!! 「でっけえ隕石だなあ」  もう地球は滅ぶな。  あ〜おしまいだあ。 「レオ!」 「諦めるな!」 「地球を救うんだ!」 「家族みんなで力を合わせて!」 「無理だろ〜あんなでっけえ隕石」  うちの家族はへっぽこ超能力者家族だった。  しょうもなかったなあ。  だけど大好きだったよ。  さよなら。  父ちゃん母ちゃん兄ちゃん姉ちゃん。 「あの隕石がバランスボールだったらなあ」  俺は呑気につぶやいた。  そしたら家族みんなの顔がぱあっと明るくなりそれぞれが叫んだ。 「バランスボール!!」 「バランスボール!?」 「「バランスボール!!」」  はあっ?!  俺と家族全員の両手からなんかビームが出た。  巨大隕石にビームが当たる!  ボヨ〜ン!!  でっけえ隕石はでっけえバランスボールになってゴロゴロ転がって行った。  バランスボールになった隕石はどこまで行った〜?  知念一家は世界を救った。 「物質変換超能力(ぶっしつへんかんちょうのうりょく)が俺たちにあったなんてなあ」  父ちゃんが言った。 「さあご飯にしましょ」  母ちゃんが言った。  父ちゃん母ちゃん兄ちゃん姉ちゃんは何事もなかったかのように屋根を降りてリビングに戻った。  俺も何事もなかったようにリビングに戻った。  テレビのニュースに流れる巨大なバランスボールの転がるさま。  アナウンサーは語る。 「突如として現れた巨大隕石は巨大なバランスボールに変わり太平洋に転がって行きました。今日は四月一日ですがエイプリルフールのニュースではありません。……国民の皆様これは現実です」  しょうもなねえな、なんか。  うちのへっぽこ超能力者家族は何事もなかったかのように、冷めきってしまった朝ごはんを温め直していつもの何気ない家族団らんのなか食べ始めた。            おわり
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