再出発

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 浮かび上がった意識と共に、身体の重みが圧し掛かった。  はっきり聞こえる必死な声。  朧気な視界に黒い頭のぐしゃぐしゃな泣き顔が映る。  折角の男前が台無しだ。 「…っ…う…ふ…っ…」  名前を呼ぼうとしたけれど、酷く喉が渇いて声が出ない。  これは困った。  手足も麻痺して感覚が鈍い。  随分長く寝ていたらしい。 「カルディナっ!カルディナ…っ…!」  情けなく泣きながら安堵したように笑う姿―――、フォルクスは尚も名を呼ぶ。  正直、声が大き過ぎて煩い。  ちょっと黙ってくれ。  耳が痛い。 「…ちょっと煩い!落ち着け!」  代弁するように泣き顔を押し退けて、恰幅の良い看護師と白衣の医師へと目の前が入れ替わる。  これは有り難い。  取り敢えず、状況を知りたいが尚も声が出ない。  ―――そうだ。  微かに動く手の指で、うろ覚えのモールス信号を叩く。  ここは何処?  どんな状況?  皆は無事?  セルシオンは?  その問いに気付いたのは、やはりフォルクスだった。  医師達が処置やら確認に追われる中、手を握って信号を読み解く。  袖で涙を拭った彼は、医師達の邪魔にならぬよう耳元で囁くように聞きたいことを教えてくれた。  ―――嗚呼、戻ってきたんだ。  そう思ったら眠気が襲った。  ゆっくり閉じた瞼に、またも声が煩くなった。 「…カルディナ」  一瞬、暗転して今度は穏やかな声がした。  再び瞼を開け、視界に映った姿に涙が零れた。  ―――お父様。  そう呼ぶ声の代わりに、子供のような嗚咽が溢れた。  天空要塞での戦闘中、重傷ながらに生きていることは聞いていたが、元気そうなその姿を見たら安堵のあまり胸が一杯になった。 「おかえり」  そう言って、横たわる身を抱きしめてくれる温もりに生還したことを実感した。  そして同時に―――、自身を助ける為に大切な相棒を失った事も理解した。
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