それでも歩みは止めず

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 セリカ皇女と侍女の亡骸は隣り合うようにしてスティングレイス修道院の中庭へと埋葬された。  修道院の外れにも墓地はあったが、ここの修道女達は親類から逃げて来た者など訳有りが多い。  彼女等を匿った皇女の墓とあっては、逆恨みによる墓荒らしに遭う可能性が高いことから、部外者の入り込めない中庭が適切と判断された。 「ご協力ありがとうございます」  夕刻、墓石の設置を終えたカルディナ達に、修道女達は感謝を述べた。  女ばかりの修道院故に力仕事が困難で、セルシオンが爪で墓穴を掘り、手先の器用な下士官が墓石に名を刻んだりと協力した。  本当は帝国の作法に則り時間を掛けて弔いたかったが、アウディシア奪還作戦の只中で、遺体の腐敗や略奪の危険から長くは置いておけなかった。 「こちらこそ皇女の血液採取に応じて頂き、感謝します」  そう言葉を返したヴォクシスに、背後に控えていた軍医や下士官も敬礼で感謝を伝えた。  皇女が使用した毒薬が今後、帝国との戦いで使われる懸念があることから調査の為サンプルを取らせて貰った。 「……、皇女様の墓標とお棺は我々が護ります。いつか、あの方をお赦しになれる日があるならば、またいらしてくださいませ」  そんな修道院長の言葉に、ヴォクシスは思わず困ったように哀しく微笑んだ。 「あの…」  おずおずとカルディナは声を掛けた。  この修道院の成り立ちを聞いた上、セリカ皇女が自決した事で、どうしても気掛かりなことがあった。
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