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宙の彼方より
全速力で羽撃く機械仕掛けの竜に引き上げられ、殺戮の熾天使がぐんぐんと空の彼方へと昇っていく。
カルディナがデュアリオンに乗り込んで間もなく、フォルクスに抱えられてハスラー博士は無事にエノーラから脱出。
それからすぐに、二人を迎えに来た輸送機に回収されたと地上から送られてきた信号で理解した。
高度が高過ぎて、こちらから了解の返事を返せなかったのは心残りだが、もう憂うことは何もない。
コックピットの中、急激な上昇により圧し掛かる重力と酸素濃度の低下に、警告表示が一面を塗り潰す。
戻れとばかりに警報が鳴り響こうと、カルディナは歯を食いしばってセルシオンと共に天へと進み続けた。
空の群青は宇宙の紺へ。
微かに振り返った故郷の島が、雲の隙間から小さく見える。
静寂と漆黒の狭間、境界線を成す大気の曲線に、生まれ育った惑星が本当に丸いことを知った。
「綺麗…っ…」
微かに声を零し、辿り着いた宇宙。
コックピットに残された薄い酸素に息苦しくなりながら浅く細かい呼吸で、地上から摘み出した熾天使をセルシオンとせーのでより遠くへと投げ放つ。
―――ここまで来ればもう大丈夫…。
ホッとした瞬間、酸欠で意識が遠退いた。
『カルディナ!』
その呼び声と同時だった。
覆い被さるように飛び掛かったセルシオンの背後、熾天使が一際に強い光を放って爆ぜる。
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