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あまりに眩しかった。
目が眩んだ。
強い衝撃が機体を揺らす。
フッと視界が真っ暗に。
熱も痛みも無い。
恐怖もない。
一瞬だった。
―――嗚呼、呆気ない。
死ぬってこんな感じなんだ。
そう考えた矢先だった。
『……カルディナ…』
優しい呼び声に我に返った。
ゆっくりと開いた瞼、罅割れた画面に見るも無惨な白竜の姿が飛び込む。
熱線をもろに浴びた翼は溶け消え、背面は殆ど原型を止めず、吹き飛んだ鱗の内から機械部分が剥き出し、粉々になった部品が浮遊している。
「セルっ…!」
今にも崩れそうな相棒を抱き留めんと竜の腕を伸ばす。
しかし、そこで気付いた。
デュアリオンは翼も四肢も頭部までもが吹き飛び、自身が乗るコックピットの胴体部分しか残されていなかった。
『ごめんね…、一緒に…帰れそうに…ないやっ……』
息も絶え絶えに謝ったセルシオンは、ゆっくりとカルディナを乗せたデュアリオンの残骸を地上へと向けて押し放つ。
大気の境界線、すぐそこにあった重力は彼女を故郷へと引き戻し始めた。
「セルっ!セルシオン!」
パズルのピースが崩れるように、黒くなっていく画面へと手を押し当て、カルディナは嫌だと首を振って涙を散らす。
離れていく主の声にセルシオンは柔く笑った。
『カルディナ…っ…、大好きだよ…』
その想いを告げ、白銀の竜は花が崩れるように漆黒の宇宙に舞い散った。
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