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視界の端、何かが煌めく。
振り返るように目を向け、息を呑んだ。
地上に落ちる黄金の彗星。
否、それは―――。
「カルディナぁっ!!」
名を叫び、輝く姿を追って急降下する。
炎を帯び、剥がれる竜の残骸より投げ出された白い衣の乙女。
乱気流に呑まれながら、無情に堕ちるその手に必死に手を伸ばす。
もう少し。
あと少し。
瞬間、確かに掴んだ細い手首。
二度と離すまいと手繰り寄せ、雲を突き抜けて確かにその身を抱きしめた。
限界を超え、焼け付く翼に背が焼かれる。
痛みに顔を歪めながら、もう二度と飛べなくて良いからと浅葱色の海に浮かぶ戦艦へと出来る限りにゆっくりと目標を定める。
「カルディナっ、しっかりしろ!もうすぐだ!カルディナ!目を覚ませっ!」
腕の中、ぐったりとする彼女に懸命に声を掛け続ける。
呼吸が確認出来ない。
乱れる自分の心音と吐息で、鼓動の有無も分からない。
「フォルクスさん!」
「隊長!」
その声に地上と上空から接近してきた同胞に気付いた。
仲間に支えられるように戦艦へと降り立ち、待ち構えていた軍医達が担架を手に駆け寄る。
その間、甲板に横たえた彼女にフォルクスは人工呼吸で酸素を送った。
死ぬな。
死なせて堪るか!
仲間達が火傷も覚悟で背から焼けた翼を取り外す中、止まり掛けの心臓を停めまいとその胸を押し、名前を呼び続ける。
「フォルクスさん!」
引き剥がされるように肩を抱かれ、入れ替わるように軍医達が処置を始める。
白衣に取り囲まれる姿を前に満身創痍の彼は、泣きながら何度もその名を声が嗄れるまで叫び続けた。
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