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「これは息抜き。早く戦後処理を終わらせて、エルファ島にバカンスにでも行きたいよ」
そうぼやきながら、ヴォクシスは眠り続ける娘の頭を撫でる。
王都の戦後処理が粗方収まってきたのを期に、いつでも会いに来れるようにとこの病院に無理を言ってカルディナを転院させてもらった。
どの医師にも意識が回復する可能性は極めて低いとは言われたが、奇跡は諦められなかった。
「あら、イケメン君だけでなくお父様もお見舞い?」
そんな誂う声に目を向ければ、アウラ医師がカルディナの点滴を替えに来た看護師と共に往診に来ていた。
「はいこれ、イケメン君には請求書とこの前の検査結果表。背中の傷の治りも良好だし来週には退院出来るわ。看護師達が寂しがるわね」
嬉しくない書類を渡して、アウラ医師は更に誂う。
覚悟はしていたが、中々の金額である。
「検査結果表?」
とヴォクシス。
何の検査だと視線を向ける彼に、フォルクスは思わず視線を逸らした。
「あらやだ。ヴォクシス、貴方の指示じゃなかったの?私、てっきり…」
驚くアウラ医師の発言にヴォクシスは更に首を傾げる。
「あのっ、個人的な確認ですから。費用は自分で持ちますからっ…!」
これ以上、突っ込まれる前にと弁明しつつ、フォルクスはそっと検査結果表を背中に隠す。
その慌て方に勘が働いた。
サッと回り込んで結果表を奪い取ったヴォクシスは、自分の方が一回り背が高いことを利用して腕を大きく掲げながらその表紙を確認。
止めてくれと情けない悲鳴を上げる彼を後目にペラペラと内容に目を通し、そして、ニッコリと微笑んだ。
「良かった良かった。痩せ型なのを除けば健康そのものだね」
そんな一言に、フォルクスは恥ずかしさのあまりしおしおと蹲り、内容を知っていてか医師達は苦笑い。
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