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「だめっ、声が、出ちゃ……っ」
「近くに家はないから、好きなだけ喘いでください」
別荘が集まっているとはいえ、建物同士は十分な距離が保たれている。隣の別荘といってもその姿はバルコニーからでも遠くにしか見えない。
つまり、彼は行為を中断する気はないのだ。その証拠に詩織の奥に潜り込んだ指の動きは激しくなるいっぽうだ。
「あン、あっ……ダメっ、そこ、変になるのぉ……っ」
「一度イッておきましょうか」
蜜窟に侵入していた太い指はさらに肉壁を擦り上げた。
「そこ、だめぇ……」
感じやすい場所を攻められている自覚はあった。彼には自分の体を隅々まで掌握されているかもしれない。快楽と恐怖で頭が麻痺していく。
「あっ、あンッ……はぁっ……」
びくりと体が跳ねた。思考が停止し、両手でバルコニーの手すりをつかみ快楽に耐える。
「……はぁっ…あ……」
詩織は肩で大きく息をして呼吸を整えようと必死だ。
「ちゃんとイケましたね?」
言葉にされるとさらに恥ずかしい。背中越しに詩織は小さくうなずいた。
「今度は僕も、気持ちよくなっていいですか?」
力強い腕が腰を引き寄せる。佳人の硬いものが、詩織の臀部に当たった。
「そのまま挿れないで……」
「ちゃんと着けたから大丈夫ですよ」
詩織が息を整えている間に避妊具を装着していたらしい。背を向けていたせいもあるが、注意を払う余裕がまったくなかった。
「詩織さん、もっとお尻を突き出してください」
言われるままの体勢をとると、臀部ごと彼に差し出しているように思えた。
彼の猛りが思わぬ角度から柔肉をなぞる。
(この姿勢のまま?)
そういうつながり方は知ってはいた。だが、あくまで知識だ。実際に試すとなれば別の話になる。
佳人が両手でくびれた腰をつかむ。
「待って佳人さん……あ……っ」
ゆっくり、隘路を確かめるように佳人が押し入ってくる。じわじわと詩織の肉襞を押し広げて進むのだ。
「やだ、これ……何っ?」
必死で手すりをつかんだ。所在なく、不安定な姿勢でどうしていいかわからない。
「大丈夫ですか?」
背後から聞こえる佳人の声にかろうじてうなずいた。大丈夫じゃない――内側で暴れまわる快感に完全に飲み込まれている。
深く打ち込まれた楔は佳人の腰の動きに合わせて前後し、詩織の内壁を擦っていく。
乾いた肌のぶつかり合う音、彼の荒い息遣い、二人のつながった部分から生み出される卑猥な水音。
それらが聴覚を通して詩織を追い詰めていく……。
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