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「ひぅ……アァン!」
堪らず派手な声をあげてしまった。ベッドで交わるときとはちがう角度、ちがう動き。直接見られない今の体位を頭の中で想像したら、どっと奥から蜜があふれてきた。
「詩織さんはこんな格好で抱かれても、気持ちいいんですね?」
「そんな風に言わないでぇ……っ」
詩織は子供がイヤイヤをするように頭を横に振る。セックスのときだけは佳人は意地悪な言葉で攻め立ててくるのだ。
「あっ、いやっ、ダメ……っ!」
「イイって言わないと、最後までイカせてあげませんよ」
佳人が動きを止めた。
「えっ?」
刺激が止んだはずの蜜道はまだ震え続けている。詩織の意識とは関係なく、胎内の佳人をさらに締めつけた。
「クっ……」
「佳人さん……んぅっ!」
佳人の苦しげな声に詩織は振り返ると、唇を奪われ、舌を吸われる。キスの刺激だけで達してしまいそうだ。
追い詰められているのは佳人も同じだった。唇を離した彼が小さく呻く。
「やば……このままだと、僕のほうが先にイってしまいそうです。少し、動きますよ」
「……はい」
熱っぽい灰色の瞳で請われたら、ノーと言えるわけがない。
詩織の許可を得た佳人は律動を再開した。慎重に前後だけを繰り返していた腰の動きが、しだいに激しさを増していく。うねり、かきまわし、詩織の内部で暴れる。
「壊れちゃう……」
詩織は、いつの間にか金属の手すりに爪を立てていた。そのうえに、佳人の手が重ねられる。ギュッと詩織の手を包み込んだ。
「詩織さんの中、ビクビクしていますよ。このまま一緒にイケますか?」
彼の呼びかけに、詩織は壊れたおもちゃのようにガクガクとうなずいてみせる。本当に壊れてしまっているのかもしれない。快楽に溺れて、彼の言葉の意味さえわからなかった。それでも、佳人を受け止めている女性の器官がそれを欲したのだ。
加速する抽挿に熱が高まり、そして弾けた。
「佳人さん、佳人さ……あ、ああっ」
詩織の体がしなる。体の動きは停止しているのに、内側の痙攣が止まらない。胎がうごめき佳人の剛直を締め上げ――。
「ウぅッ」
グリッと奥まで突き入った佳人がピタリと動きを止めた。直後、薄膜越しに彼の熱を感じとる。二人とも乱れた息を整えるので精一杯だった。膝に力が入らず、崩れそうになるのを佳人が支えてくれた。
「詩織さん……」
まだ息は荒い。
心が、体が、彼に触れられることを望んでいる。
(佳人さんが好き……)
好きな男性が自分の名前を呼んでくれる。互いを求め合える距離にいる。
詩織は佳人のぬくもりに身を委ねた。
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