目覚め

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目覚め

真っ暗な意識の中に、薄光がさし始める。 名を呼ぶ声が頭に響いてくる…… シュタイナー シュタイナー シュタイナー…… 誰だ? シュタイナー シュタイナー シュタイナー…… 懐かしい名 シュタイナー シュタイナー シュタイナー…… 私の名 シュタイナー シュタイナー シュタイナー…… 違う名前もあちこちから響いてくる。 ブレイ。トラスリア。アンダー。アリトキ。クレンディス。シュイ。センデレア。ウルス。サイラス。ドーム。セリンライアン。ヨウセン。ヴェルト。イー。セランスタリア。クラス。ソウセイ。イモーン。ダロス。 全ての名前は懐かしく、懐かしさは私の故郷へ シュタイナー シュタイナー シュタイナー…… 様々な声の中で、この名前だけが一段と強く呼びかけられていた。 光はどんどんと強くなっていき、気がつくと見覚えの無い灰色の天井のどこを見るともなく見つめていた。 気づいて起き上がると、酷い頭痛と倦怠感に襲われて思わず頭を抑え喘いだ。皺ひとつない純白のベッドに手をついて立ち上がろうとするが、体に上手く力が入らない。深く息をついて思い切り立ち上がると、立ちくらみに襲われて近くの本棚にぶつかった。 頭に手を当てながらその本棚を支えにして体勢を整えると、シュタイナー・ヴォイシャは周りを見回した。少し古臭く見えるが高級感のある寝室であり、掃除は行き届いているようだった。 鏡に映ったシュタイナーは幾分か以前より痩せたように見える。ここに来た経緯を思い出そうとするが、様々な記憶が混濁していて上手く思い出せない。ただ一つ、自分は戦っていたという曖昧な感覚だけをシュタイナーは覚えているのだった。 部屋を出て廊下を歩くとだんだんと記憶が戻ってきたが、なぜ自分がこんな場所にいるのかわからなかった。ここは嘗てシュタイナーが魔王たちと死闘を繰り広げた場、魔王城であり、目覚めた時そこで自分は手厚く看護されていたからである。先ほどの頭痛や倦怠感に加えて酷い空腹と喉の乾きも感じていたがかまわず歩き続けた。 廊下を幾度か曲がるうちに城内の地理も思い出せてきて、ひとまず魔王の玉座が存在する『玉座の広間』へと向かうことにした。そこならば誰かがいる可能性があると思ったからだ。戦争中、つまりシュタイナーが覚えている最後の魔王城の記憶とは違い、城内はあらゆるところが修復されていて以前にも増して美しく、荘厳な雰囲気すら感じられる。そう思った時、シュタイナーは内心でそれを否定した。 (いいや、これが本来の魔王城だ。それをわざわざ踏み込んでいって壊したのは……) 後悔に顔を歪める。記憶が戻りつつあり、ここへと来た経緯、何が起こったのかを着々と思い出し始めたが、それと同時にさまざまな感情までもが一度に思い起こされてきた。シュタイナーは深くため息をついて再び歩き出した。 『玉座の広間』の前の扉は以前と変わらない重々しい雰囲気が漂っていた。シュタイナーは初めてここへ来た時と同じ暗い気持ちになった。その重々しい扉を体重をかけて押し開けると、部屋の向こうの魔王の玉座は空席で佇んでいたが、その前にいくつかの人影が見えた。いつでも戦えるように体勢を整えてゆっくりと進むと、そこにはもはや見慣れた魔王側近『四天王』の3人の姿があった。 「お目覚めになられましたか。おはようございます、我が君。」
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