2人が本棚に入れています
本棚に追加
「すまない、謝る。本当に気づかなかったんだ。」
「今更何を……」
男は先ほどとはリズムの違う、しかし先ほどよりも速く、威力も強い攻撃を繰り出してきた。いまの会話の間に自身の体を強化したのだろう。
シュタイナーは内心でこの男に好印象を抱いた。隙を見逃さず勝利のための一手を打ち、頭を使った攻撃をし、決定打にならないと見るや攻撃パターンをずらす。魔術師として一流だった。
「怪我をしても恨まないでくれ。」
シュタイナーはカウンターの打撃を鳩尾に叩きつけた。男から苦悶の声が漏れ、地面に倒れ込もうとしたがそれを許さずに男に組み付く。男を真正面から持ち上げて地面に叩きつけた。いわゆる"櫓投げ"である。
離れて見ていた少年少女が息を飲んだ。キュランと呼ばれた少年も唖然としている。
「何事だ!?」
建物の中から数人の男女が出てきて叫んだ。子供たちが男女に説明をする。当然、誤った説明を。
「アルナ、君は学長に知らせに行ってくれ。思念が届かない。ここは俺たちで食い止める!」
「ちょ……」
「分かりました、ご武運を!」
茶色い髪を肩に垂らした優しそうな顔の女が、深刻そうな顔をして建物の中に走っていった。
「ちょ……ちょ待てよ……」
シュタイナーは日本の有名な俳優みたく困惑のセリフを吐いた。
子供たちはさらに離れたところ、一部は建物内に行き、遠巻きにこちらを見ている。4人の男女______3人は男、1人が女である______がシュタイナーは囲むようにジリジリと展開していく。
「な、何度も説明しているが、俺は危害を加えたいわけじゃないんだ!ただの旅人なんだ!」
4人はその言葉を無視し、距離を詰め始めた。シュタイナーは門へとまた下がっていく。2人が先ほどシュタイナーが倒した男に駆け寄り、離れたところへ連れていく。しかし残りの2人が目を光らせてシュタイナーを監視していた。
男を安全なところに退かせた後、2人は戻ってきた。そしてシュタイナーがこれ以上下がれない、というところまで来ると、全員が一斉に飛びかかった。
最初のコメントを投稿しよう!