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アルダーは驚きに目を見開いた。
「不老不死は実在したのですか……!?」
「魔族の使う魔法ではな。不完全ではあるが、ほぼ不死だ。」
「なぜ先生に不老不死の魔法を施したのでしょう?」
アルダーはまだ疑っている様子だ。
「魔王が言うには、俺に魔王の代わりとして世界に平和をもたらして欲しいと。」
「魔王が平和ですか……」
皮肉そうに笑ったアルダーは、顎髭を手でなぞりながら言った。シュタイナーは話題を変えて尋ねた。魔王の人間からの評価は知っていたからだ。
「ところで話は変わるが、ここは何の建物だ?みたところほぼ全員魔具なしで魔術を使っていたようだが。」
「ええ、ここは魔術師育成のための学園です。50年以上前にあなたが教えてくださった、従来のものとは全く違った"学校"の概念をもとにしてつくりました。ここには"オンセン"もありますよ。」
そう言ってアルダーはニコリとした。
「エルフも噛んでるのか?」
シュタイナーは驚いて尋ねた。
「"オンセン"づくりの際には協力していただけました。イシリオンやエルミアには大変お世話になりました。」
「あいつらも関わっているのか……というか、今の時代魔術師の需要なんてあるのか?」
「あの魔具のことですか?あれならば開発に関わった研究者が魔具に呪いを刻んでいたのでほぼ全てが回収、破棄されました。魔術を使えるようになり、自身の能力を強化できますが、精神がすり減らされます。使い過ぎた者のほとんどは、いわゆる"闇堕ち"状態になりました。」
「は……!?」
「その研究者は敵国のスパイだったんですよ。事態の収拾には多大な労力と時間を払いました。」
「ということは今の冒険者パーティの形態はまた元のように戻ってるのか?」
「はい、五十数年前と同じように戻りました。それに伴って魔術師需要も元通りに。ここではもう二、三十年ほど、孤児を集めて魔術師として世に送り出しています。ここをつくった時は魔術師不足でしたからね、王都では大変な評判なんですよ?」
「だからさっき力試しがどうとか言われたのか。」
「おそらく。ここには力試しで来る冒険者も多いですから。」
シュタイナーはふと思いついた疑問をアルダーに尋ねた。
「商売として成り立つのか、ここは?」
「ここの経営は主に卒業生からの寄付と王国からの支援金で成り立っています。」
「王国から支援金まで出てるのか?」
「ええ、ここをつくって10年ほどして頂けるようになりました。それまでは私の資産を切り崩して小規模にやっておりました。先生の功績とあの魔具の件にかなり救われました。」
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