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シュタイナーはしばしの沈黙の後、最も聞きたかったが、しかし聞きづらかったことを尋ねることにした。
「五十年前の俺の知っている人間で、誰が生きている?」
アルダーは目を伏せた。この時代ではやはり、寿命が元いた世界よりも短い。
「あれからエルフもドワーフも、誰一人として死んではいません。人間は……」
シュタイナーはゴクリと唾を飲んだ。
「シエロは……生きています。」
シュタイナーは安堵のため息をついた。しかし次の瞬間、もう一人の大事な友人の名を思い出した。
「ベルクは……」
アルダーは言葉に詰まった。
「……まあ年齢的には妥当か……」
冒険者時代からの付き合いである友人の死に、シュタイナーは頭では分かってはいたものの心が追いついていなかった。
「天寿をまっとうしたと言われております。私たちの知る多くの仲間が先に逝きました。」
気まずい沈黙が広がっていた。シュタイナーはこの話を振ったことを少し後悔していた。アルダーは会話の転換糸口を掴もうとして、ひとつの話題を思いついたようだった。
「そうだ、我々は数日後に王都ヘルセルナに行くんです。"修学旅行"ですよ。よければ一緒に来ませんか?」
「"修学旅行"か……」
「ええ、ここには"文化祭"も"遠足"もあります。」
「懐かしい響きだな。是非行きたいが、行ってもいいのか?」
「生徒や教師のことですか?彼らなら話せば理解してくれますよ。そう教えているので。」
アルダーは自分の生徒に対する教育に自信があるようだった。
「なら着いていかせてもらおうか。ちょうど王国の様子を確かめたいと思っていたし。ところで、ここの教師は何者なんだ?みなただの冒険者には見えない実力だったが。」
するとアルダーはニコリとして言った。
「全員ここの卒業生ですよ。」
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