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「先生、もしよろしければここでまた魔術を教えていただけませんか?私だけにではなく、みなに。」
お茶と共に出されたおいしいお菓子を食べて雑談をしていると、アルダーがそう言った。
「そうだな……それも悪くは無いな。この世界が平和になったあとなら。」
「それは……いささか難しいかもしれません。」
アルダーはそう言ってまた咳をした。
「なぜだ?」
「……王国は数年前から戦争の準備をしておりました。暦の誤差もありますし、ほんとうに壁が消えるのかという疑問がありましたから軍はまだ王都近辺のようですが、既に進軍を始めているようです。」
シュタイナーは呆然とし、人間に期待をした魔王やエスタは間違っていたのだろうか?と考えた。そしてそのことを今まで話さなかったアルダーに腹立たしい思いがした。
「他国は?」
「まだ分かりません。冒険者たちは魔族領に向かっています。王国が魔族討伐を高額で依頼しているのです。」
シュタイナーは舌打ちをして続けた。
「今の国王は誰だ?まだムートの息子か?」
「いえ、そのご子息です。先代の陛下は王位を継承されてすぐにその地位を自らの息子に譲りました。」
「ムートの孫ということか。名前も忘れたが、あのバカ息子は公務もなくさぞ楽しい生活をしているんだろう。まだ生きているだろうな?」
シュタイナーはもし死んでいたら蘇らせてもう一度殺してやる、と言わんばかりの口調で言った。アルダーがこくりと頷くと、シュタイナーはため息をついた。
「しかしこれで時間はなくなった。俺は一足先に王都に向かわせてもらう。」
「しかし王都に着いたとてなにが……」
「あのバカ息子には貸しがある。国王ではないにしろ、まだ多少の権威ぐらいはあるはずだ。」
「ですが飛行魔術でもここから3.4日、早い者でも2日はかかる距離です!とても間に合いません!」
そうアルダーが訴えると、シュタイナーは鼻で笑って言った。
「俺なら1時間で着く。」
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