『Phantom』の扉

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溜息をつきながら身体の向きを変えたアキが何かに気付き、徐にサングラスを外し、大きな目を更に大きく見開いた。形の良い唇もぽかんと開いている。 「ハル……あれ……何……だ?」 アキの視線の先を辿ったハルの目も、また同じような表情になってしまったのも無理はない。 歩道橋のど真ん中に、一枚の 『 』が立っていた。 深いブラウンの木製扉は、中央からやや上にモザイクガラスが はめ込まれていて、中は見えない。 そしてアンティーク風のアーチ状の引き手がついていた。 そんなドアが、いや、が、歩道橋の真ん中に立っているのだ。 「……これって……どこで〇ドア?」 「まさか……ドラ○もんじゃあるまいし」 しかし、歩道橋を行き交う人々は、存在感半端ないこのドアが、全く見えてないかのように行き過ぎる。 「どういう事?……」 ゆっくり立ち上がったハルが、おずおずと扉に近付いて行く。 「おい、やめとけ! ハル。扉に吸い込まれて異世界に放り出されるなんて事、俺はもうごめんだぞ!!」 アキの焦る声など聞こえてなかったかのように、ハルは振り返る。 「ねぇ、アキ。……俺らの名前が書いてある」 〚『Phantom』の扉   日浦(ひうら) 陽人(あきと) 様   藤崎(ふじさき) 陽人(はると) 様 本日は おめでとうございます。 記念日をお祝いするご用意が出来ております。 どうぞお入り下さい 〛 「いやいや……これは何かの罠だ」 「アキ、この前、殺し屋に狙われる役やってたからって、考え過ぎ」 「お前は、学習能力なさ過ぎだ」 「だってこれ、招待状じゃない? 航輝からのお詫びのプレゼントとか……。 あっ、分かったぁ! サプライズだ! だから予約もわざと……」 「あいつはマジシャンか! んな訳あるかっ!」 「ちょっと中 覗いてみてから決めるって事で……」 「おおおいっ!! やめろっ!!」
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