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そう勇んで繰り出した二人だったが……
街の真ん中で途方に暮れていた。
三連休中日の日曜の夜、どこの店も、予約で詰まっているか、順番待ちの列。
こんな事なら、フライングで予約しておけば良かった。
彼女の合格は信じていた筈なのに……。
「ごめん、葉月さん……。
あっ! そうだ、高校で同じだった真也って覚えてる?」
「ええ、カメラマン目指して、写真の専門学校に進学した、増井真也くんね?」
二年前までは、『葉月が教師』『悠也が生徒』という関係だった二人。
紆余曲折ありながら、卒業を機に交際を始めた。
そして、話題に上った増井真也も、担任ではなかったものの、葉月の生徒だった。
「あいつ、7月の真也の誕生日に、ちょっと豪華なディナーしたってインスタに載せてた。ねっ、雰囲気良くない? 場所、聞いてみる」
悠也はスマホで葉月にその写真を見せ、そのまま、通話キーをタップした。
「真也、久し振り! 元気か?
彼女とは? うまくやってんだよな?」
「お〜悠也! うん、勿論うまくいってるよ。お互い忙しいからあまり会えないけどな。
ってか、そっちはどうなんだよ?」
「おう、ラブラブよ! でさ、真也、誕生日に豪華ディナー写真載せてたじゃん?
俺らもその店行きたいなってさ」
「おお!あの店良かったぞ! いつ行くの? えっ、……今日?!」
真也との通話を終えた悠也が、脱力したようにその場にしゃがみ込む。
「その店、オフィス街だから、日曜定休だってさ。
はぁ……全滅だ」
「そっか……。もう、いつものファミレスでもいいよ。
悠也がお祝いの気持ち込めてくれれば私は……」
「絶っ対にヤダっ!!」
繁華街から一本入った路地、電柱に背をつけるように舗道に座り込んだ悠也は、葉月が腕を掴んでも、拗ねたように動かない。
「ねぇ、別に誕生日でもないし、今日に拘らなくても……。今度、どこか予約してまた出直そう」
「ごめん。俺、こんな時にビシッと決められなくて、ダサい……」
「そんな事ない! サプライズで花束くれたじゃない!
すっごく嬉しかったよ。
だから……今日は諦めよ」
「うん、ごめん……」
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★文中の「増井真也」は、『秘密』の登場人物ではありません。
「エブリスタ遊園地」の『卒業文集』で、キャラ同士が仲良くなりました。
ここにも、素敵な出逢いの奇跡が…✨
増井真也くんは、桜井明日香さんの作品の登場人物です。
https://estar.jp/users/514904037
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