ある夏の終わりに始まる、

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 王太子殿下の伴侶選びの夜会が行われる事になったのは、ある夏の終わりの事だった。  僕も招かれたが、興味がまるでないため、欠席の返事を出した。  しかし、暑い。  王立図書館で借りた本を片手に、僕は涼める場所を探している。そうして暫く歩いた時、閑散としている食堂が目に入った。もう昼食時を過ぎているから、この時間帯ならば静かだろう。そう判断して、僕は食堂の中に入った。  窓際に席を見つけて、僕は飲み物を注文した。アイスティーを飲みながら、魔導書を読もうと決める。本日は休日だ。僕は普段、宮廷魔術師として王宮で働いている。この食堂も図書館も、王宮の敷地内にあるのだが、僕が普段勤務している場所はもう少し遠い旧宮殿にある。こちらの敷地は、主に騎士団が鍛錬をしている場所だ。 「あ」  僕が魔導書を捲り始めて少しした時、そんな声がした。僕は特別顔を上げる事はせずに、先を読み進める。 「ヴェル」
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