ある夏の終わりに始まる、

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 しかし名前を呼ばれたので、さすがに顔を上げた。すると僕の真後ろの椅子を引きながら、首だけで振り返っているキースの姿があった。キースと僕は、王立学院時代の同級生だ。キースは騎士科、僕は魔術師科だったが。 「久しぶりだな、元気だったか?」 「うん、まぁね」  精悍な顔つきのキースは、気のない僕の返事に対し、気分を害した様子もなく頷いた。キースはちょっと意地の悪いところはあるが、基本的に明るくて、周囲に人気がある輪の中心にいるタイプだ。一方の僕は、いてもいなくてもあまり気づかれないタイプだと思う。あまり人に声をかけられない。声をかけてくるのは、同じ宮廷魔術師のアクスだけだ。 「そう言えばヴェルって」 「うん?」 「アクスと付き合ってるのか?」
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