ワンパン(一撃のパンチ)

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ワンパン(一撃のパンチ)

運転手yは、タクシーを囲んでいる武将の格好をした人々を見て、恐怖を覚えた。 同時に、「今流行りの、交通トラブルというやつじゃないか。こういう時は、車の中から、出てはいけない。警察に電話で、通報するに限る。」と思い、スマートフォンで110電話を掛けた。 しかし、繋がらない。よく見ると、圏外のマークが出ているではないか。 周りを囲んでいる、武将の格好をした人たちは、中学生ぐらいの体格しかない。中学生の悪ふざけか。 運転手yは、少し安どのの気持ちが芽生えてきた。 ここで、運転手yの生い立ちに、少し戻そう、小学校、中学校は無事に過ごしたが、高校生になると、突如として、中国拳法にはまりだす。 中国拳法の本を買い、夜になると、家の前や、公園で一人で練習していた。 当時としては、まだ珍しかった通販で、カンフーの胴衣を買い、それを着て練習していたのである。 今なら、不審者が、公園で、一人で暴れていると通報されるが、今から40年ほど前は、通報されなかったのである。 運転手yは、タクシーのドアを勢いをつけて、思い切り開け、武将の格好をした人々を、なぎ倒した。 そして、中国拳法の太極拳の構えをして、相手に対峙した。 相手は少し、怯んでいるように感じた運転手yは、ここぞとばかりと思い、武将の格好をした代表格に左上段回し蹴りをくらわした。 決まったと思った瞬間、武将の代表格の格好をした相手は、手で軽く払いのけ、左腕で、運転手yの腹にパンチを打ち込んできた。 運転手yは、その場で、気を失なってしまった。
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