アルゴスの瞳

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 十年前、人類は恐ろしい怪物を見つけてしまった。  アメリカ・ニュージャージー州のとある作業現場で怪我人多数、死亡者三名という痛ましい鉄骨落下事故が発生した。その際に死亡した男性作業員の死体の内、二体は家族の元へ帰った。  だがテネシー・ベルガーという男の死体だけは、損壊が激しく家族の元へ戻ったのは誰かも分からない肉の塊だった。  このとき彼の家族の元へ戻ったのが、テネシーの服を着せた本当にただの肉の塊だとは誰も気づかなかった。  なぜ彼の死体が正しく家族の元へ戻らなかったのか?   戻せるはずがない、死んだテネシーはテネシーでは無かったのだから。  死んだのは、テネシーの皮を被った何かだった。  ミステイカー……『間違えた者』と名付けられた怪物は人を殺し、その皮を被って擬態する。  その擬態性能は非常に高く、外見はもちろんの事どういった方法かは不明だが記憶までも完全にコピーする。小さな仕草、言葉遣い、本人ですら無自覚な癖まで完全に真似るため親しい仲であっても判別する事は難しい。  だがその完璧ともいえる擬態を、見破ることの出来る人間がいた。
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