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「和哉、仕事? やっぱり帰ったほうがいいんじゃない?」
「……いや電話は先生から」
「父さん?」
「……亜蘭がいなくなったって連絡がきたらしい」
「え?」
「こっちに向かってるんじゃないか?」
「こっちって、日本に?」
「いやここに」
「バレちゃったからもういいんじゃないか?」
「何言ってんだよ、契約して行ってるのに勝手に帰ってくるわけにいかないだろ」
「でもいなくなったってよ? 電話も出ないって言ってたけど、波留が掛ければでるかもしれないな」
「そっそうかな」
急いで波留が電話をしてみたが「電源切れてるね……」
「じゃあ俺らは何も出来ないんだからしょうがないよ。何かあれば電話くるって……だから波留はもう寝な」
「う……ん、そうだね」
『亜蘭、どこ行っちゃったんだ。会って何を言われても今の僕の気持ちが緩むことはないけど、居場所が知れないのは心配だよ』
◇………◇………◇
翌朝
『ウッ寒っ』
和哉は客間で薄い掛け布団で寝たために、寒さで目が覚めた。
時計を見ると七時を過ぎたところだ。
ゴソゴソとリビングに出てきた。
リビングはもう暖かくなっているから、もう波留は起きているはずだが目の届くところにはいない。
コーヒーの匂いがするから、朝の一杯は飲んでいるはず。
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