ピーターパンシンドロームファースト

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御都合主義と言うのは如何にか生き急ぎがちだが、何より恐ろしいのは人間であると私は確かに思うのだ。「私は飛行能力を欲していなかったか…。河東さんはまさか鳥を崇拝していたか…。」私は思慮を巡らせ、物思いに耽っていた。「鳥人間の川越(かわごえ)です。宮浜さんは元気ですね。」精気の抜けた体操選手みたいながたいの兄ちゃんと言う感じか…。川越さんはしかし、あまり背は高くない。私より低いほどだった。「川越君ならいびり出されはせんだろう。互いにハーピーだからな。あっははっ!縺れたか?類友とは言え、おかしな話だ。」平木さんはほくそ笑み、川越さんを半ば投げやった。「鳥=神。自己神格化したくはないんですが、河東さんが譲りませんでしたよ。あっははっ!」何やら、川越さんは河東さんと相部屋…同じ檻だったらしく、私に愚痴愚痴と力無く、不平不満を言った。「そりゃそうだよな。人間が空を飛ぶんだもんな…川越さんはいつから羽が?」私は聞いた。「もうかれこれ一年前からですかね?体操選手だったんですが、何かの間違いで鳥人間になっちゃってしまいまして…サスティナブルな飛行展開を平木さんからは問われていました。その点、宮浜さんは四六時中飛んでましたよね…僕観てましたから…。」川越さんは体操座りをしながら、俯いていた。私は相変わらず、羽の手入れをしていたのだった。
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