闇中の復讐者

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「許してくれ頼む!」  俺は土下座すると、額を畳にこすりつけて頼む。  すぐ近くには身体を透けさせた少女の霊が立ち、まだ幼い俺の愛娘を見下ろしていた。  娘は妻を早くに亡くした俺の唯一の宝だ。彼女を救うためならなんだってしてやれる。  だがそんな意気込みに意味はないとばかりに、娘は汗とともに苦悶の表情を浮かべたままだ。  少女は娘に人差し指を向けると「パン」と言い放つ。すると娘の身体がビクンと痙攣し、パジャマの隙間から新たな傷ができたのが見えた。  殴られたような青たん、刃物で切られたような切り傷、ライターを押しつけたような火傷……それらが増える毎に俺の精神は狂いそうになる。  少女を取り押さえようとしても肉体のない相手に触れることすらできず、娘を抱えて逃げようにも部屋の扉は固く閉ざされビクともしない。  俺にできるのは相手の慈悲に懇願するだけ。それすらも成功するとは思えない。  何故なら、俺はこの少女の霊の正体を知っているからだ。  彼女はかつての俺の同級生で、いまの娘と同じ歳の頃に……自殺した。  原因は俺を中心とした同級生たちからのイジメだ。  遊び半分で行われた蛮行を、よりにもよって娘相手に再現している。  例えこれが因果応報の結果だとしてもあまりに酷い。  俺が懇願している間にも少女は、鉄砲のように構えた指を娘にむけ「パン」と呟いて傷つける。 「頼むから、もうやめてくれ! 恨んでいるのは俺だろ? 娘は関係ないハズだ。  俺だったら何をされたってかまわない。殺ろしてくれたっていい。  だから……、だから娘だけは勘弁してやってくれ」  号泣して懇願する俺に少女はようやくその手をとめた。  そして小さな身体をかがませると、俺の耳元に「教えてあげる」と優しく囁きかける。 「復讐っていうのはね、やられたこと以上のことをしないと満足できないのよ」
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