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「珍しいな」
彼はそういうと、人ならざる金色の瞳で私をじぃっと見た。
少し考えて
「……だったら、お前は殺さないでいてやるよ」
と言うと彼は、どこから取り出したのか錫状を持っていた。
それをぐんっと大きく横にスウィングさせると、シャランと金属の擦れる気持ちのいい澄んだ音がした。すると錫杖の動きに合わせて、一陣の風が突然吹いた。
強風に煽られて、火が薙ぎ倒されたかのように地面スレスレを這う。
みるみるうちに私たちの目の前の火柱が、着火剤の上をメラメラと2センチ程度の炎を上げるだけに静まった。
「あ……!」
樹里も顔も、先ほどの火柱の煤で真っ黒になっていた顔を見合わせて、驚く。
(どういうこと?!)
何が起こったのか、意味が分からない。
焚火サイズに納まった火を見て、次には空中の人を交互に見やる。
呆然としたのもつかの間、
「きゃー!」
「いやー!」
まだ3m先には、炎の恐怖に叫ぶ人々の声が聞こえ、それが私を現実に引き戻した。
ロケット花火の攻撃を受けて、服や髪に火がうつっている。チリチリと嫌な音と臭いがした。
経験してなくても、本能で分かる。
人の身体の油やたんぱく質が焦げる匂いだ。
焼けた髪の毛や服から細かな火の粉が舞い、それが更に燃え広がる要因になっていた。
事態はどんどん悪化するばかり。
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