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「お願い、あっちの火も消して!」
唐突に、私は彼に向って叫んでいた。
どうやったのかは分からないけど、彼が火を鎮めたのだけは分かったから。
「やだよ。俺様が起こした火だ。なぜ、俺様自らが消す?」
「あなたが……?」
「俺がここに飛んで来たら、あいつらが勝手に驚いて火をつけた。それだけだろ」
あの流れ星みたいなの、この人だったんだ。
「人間なんて、死んだらいい。気安く山に入りやがって、名高き霊山を穢した罰だ」
片方の口角上げて、ニヤリと笑う顔が炎に照らし出される。
「あなたは一体……?」
羽の生えた人間。空を飛べる人間。
ううん……。この人、きっと人間なんかじゃない。
「俺様の姿が見える稀少な人間だが、名乗る義理はねえな」
そっけなく彼は言って、薄く笑った。
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