1章 久保手山レポート事件

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「お願い、あっちの火も消して!」  唐突に、私は彼に向って叫んでいた。  どうやったのかは分からないけど、彼が火を鎮めたのだけは分かったから。 「やだよ。俺様が起こした火だ。なぜ、俺様自らが消す?」 「あなたが……?」 「俺がここに飛んで来たら、あいつらが勝手に驚いて火をつけた。それだけだろ」  あの流れ星みたいなの、この人だったんだ。 「人間なんて、死んだらいい。気安く山に入りやがって、名高き霊山を穢した罰だ」  片方の口角上げて、ニヤリと笑う顔が炎に照らし出される。 「あなたは一体……?」  羽の生えた人間。空を飛べる人間。  ううん……。この人、きっと人間なんかじゃない。 「俺様の姿が見える稀少な人間だが、名乗る義理はねえな」  そっけなく彼は言って、薄く笑った。
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