1章 久保手山レポート事件

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(まあ、毎年どこかでなんらかの水難事故は起きているもんね)  ここに限ったことじゃない。  悲しいけれど、どんなに気を付けても夏には必ず水難事故は起こっている。たまたま、それが毎年のようにここで連続して起こっただけ。 (気を付けていれば、大丈夫よね)  と思ってた。  もちろんそれは、樹里には伝えていない。  そんなこと知らせたら、せっかくのキャンプが楽しくなくなっちゃうもの。 「キャンプを兼ねて、課題レポートまでやっちゃうなんて、控えめに言って最高!」  樹里が私のアイディアを絶賛してくれた。  二人で割り勘して、小さいキャンピングカーを借りていた。  今日はこの川遊びの後は夕飯にBBQして、キャンピングカーで一泊。  明日になったら、久保手山キャンプ場近くの山岳資料館に行って、民俗学のレポートをする計画だ。  川から上がって、レンタルしたキャンピングカーの冷蔵庫から缶ビールを取り出した。  冷蔵庫には仕入れた食材とお酒がぎゅうぎゅうに詰まっていた。 「これもやろうね!」  8月のこの時期、少し安くなった花火を樹里は取り出した。 「もちろん! やろう、やろう!」  来年は就活で忙しい。  今のうちに、いっぱい楽しい思い出作んなきゃ。
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